2017年11月10日金曜日

落ち葉で②(遊びにおける科学的プロセス)



1.【出会う】 
 その後、落ち葉の集め場所は土管の中へと移りました。集めた落ち葉の上に座り、「ふかふかしてる」と喜んでいます。その様子に釣られて、0歳1歳の子ども達も集まって来ました。
 興味深々で土管の中を覗き込む小さな子どもに変わり「入れて」と代弁すると、快く入れてくれました。土管の中は、先程よりも範囲が狭くなった分集められたという満足感が高いようです。
 
2.【心に火花が飛ぶ】
 暫く感触を楽しんだ後、A君が山のような落ち葉を目の前に焼き芋をやりたいと言い出しました。賛同する周りの子ども達。すぐに芋畑で芋探しが始まりました。しかし、つい先日乳児が芋掘りをしたばかりの畑です(幼児は芋掘り遠足がありました)。お目当ての芋が残っているのか不安が過りましたが、見守る事にしました。
 絡まり合ったつるを引っ張り直し、芋を探します。以外にも、芋と呼べる代物が見つかり喜ぶ子ども達。収穫物を落ち葉の中に埋め、火を付けようと意気込んでいます。


3.【見通しを立てる】仮説
 どうやって火を付けるか問いかけると、「ライター」「虫眼鏡で太陽を照らす」と意見が出てきました。「ライターは大人が使う物だから貸せないな」「虫眼鏡を陽に照らすのは、園長先生に確認してみよう」。そう言って確認すると、「ごめんね、今日は園長先生見てあげられないから使えないな」と答えが返ってきました。
 焼き芋の場に戻り暫く沈黙が続いた後、「そうだ」とA君が口を開きました。「この前首に縄をやってごしごししたら燃えそうになった!だからやってみよう!」。縄を首の後ろに掛けて擦り、思わず「熱い!」と叫ぶA君。その面白さに、見ていた子どもが笑います。「それじゃあA君が燃えちゃうね」と見兼ねた職員が言います。するとB君が「キャンプでは木でやってたよ」と意見をくれました。

4.【やってみる】検証
 園庭の木に縄を掛け、最初はA君が一人で擦ります。「湯気が出ない」と一言。「湯気じゃなくて、煙ね」と職員。2回目は2人で、3回目は3人で、と人数は増えていきましたが、人数が増える毎に擦るスピードは減速し、摩擦が起きそうには思えませんでした。

5.【見通しを立てる】仮説
 諦めの空気が漂ってきた時、A君が新たな案を立てます。「こっち(日向)は暑いよ。土管の中じゃあ太陽が当たらないから、こっち(日向)にして擦ったら燃えるかもよ」。暑い場所に移動したら燃えるかもしれないと、虫眼鏡で陽を照らす原理から見立てたのでしょう。そうして次の作戦に移ろうとした時、片付けの声が掛かりました。

 
 
 長い時間をかけても答えまで辿り着かない事に大人はやきもきし、また、子どもの見通しの立て方に驚き、時に感心し、楽しい思いでやり取りを見ていました。
 今回のミソは「正しい答え」に辿り着かなかったことではないでしょうか。遊びの中で子供たちはいくつもの「仮説」を立て、「検証」を行っています。時には大人の想像にも及ばない「仮説」を生み出すことさえあります。はじめから「正しい答え」を教えてもらっていたら楽しさは半減、学びも半減です。すぐに答えに辿り着かなくてもいいのです。それが遊びの特権であり、醍醐味なのでしょう。 科学もこういう一見遅々とした歩みを繰り返すことで、現在のように高い水準まで発展してきました。子供たちの様子を見ながら、遊びのなかにしっかりと「科学の芽」があることを実感した次第です。


                             (A・H)

1 件のコメント:

  1. ちょっとドキドキする遊びでしたね。でも子ども達の発想は豊かです。
    次から次へと広がります。それは、今まで見たもの経験した事がベースとなっていますね。色々な経験をさせてあげたいですね。火おこし、焼き芋、やりましょう!!

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